ふるさと納税「ワンストップ特例」を使わず確定申告のほうがいい場合も ふるさと納税「ワンストップ特例」を使わず確定申告のほうがいい場合も
ふるさと納税はもともと、確定申告により所得税や住民税の引き下げができる制度であり、申告の手間が必ずかかりました。
しかし平成27年4月以降はワンストップ特例制度により、寄付先が年間5自治体以下で確定申告の必要が無ければ、確定申告に代えてワンストップ特例申請により住民税の引き下げが可能になりました。
ただワンストップ特例の計算の仕組み上、確定申告を行うことで税額がより下がるケースもあります。
目次
確定申告とワンストップ特例の計算上の違い
確定申告とワンストップ特例で控除の仕組みが少し異なるのですが、両者に共通して住民税から引き下げになるのが、下記の控除です。
基本控除(共通)
(ふるさと納税額―2,000円)×10%(ふるさと納税額は総所得金額等×30%が上限)
特例控除(共通)
(ふるさと納税額―2,000円)×(1―10%―所得税率)(住民税所得割額×20%が上限)
この他、もう1つの控除が存在します。
所得税率に応じた控除(差異あり)
(ふるさと納税額―2,000円)×所得税率
この金額自体は確定申告・ワンストップ特例共通しておりますが、引き下げ対象の税目や上限額が異なります。
確定申告においては、所得税より引き下げとなり、ふるさと納税額の上限は総所得金額等×40%です。
一方ワンストップ特例においては、住民税より引き下げとなりますが、厳密な算式は、
特例控除額×所得税率÷(1―10%―所得税率)
となります。
そのため特例控除の上限を超えると、
住民税所得割額×20%×所得税率÷(1―10%―所得税率)
となります。
確定申告したほうが有利な事例
所得税率に応じた控除が、ワンストップ特例<確定申告となるのであれば、確定申告したほうが有利です。
厳密な計算をすると複雑になりますが、簡単に言えば所得の40%という上限枠のほうが、住民税所得割額の20%よりは大きな上限枠になるので、特例控除が住民税額の20%を上限を超えるようなふるさと納税を行ったのであれば、確定申告が有利です。
例えば、平成29年において下記のようなケースで、ふるさと納税を行った場合を考えます。
・ふるさと納税額:602,000円
・総所得金額等:給与所得1,700万円
・所得税率:33.693%
・調整控除差引後の住民税所得割額:150万円
確定申告・ワンストップ特例共通の控除から、順々に計算していきます。
基本控除(共通)
ふるさと納税額602,000円<総所得金額等1,700万円×30%=510万円
のため、原則通りの計算を行い下記のようになります。
(602,000円―2,000円)×10%=60,000円
特例控除(共通)
(602,000円―2,000円)×(1―10%―33.693%)=337,843円
この計算式では住民税所得割額150万円×20%=30万円を超えているため、30万円になります。
所得税率に応じた控除(ワンストップ特例によるもの)
特例控除の計算が上記のようになるため、
300,000円×33.693%÷(1―10%―33.693%)=179,515円
となります。
所得税率に応じた控除(確定申告によるもの)
一方、こちらはふるさと納税額602,000円<総所得金額等1,700万円×40%=680万円
のため、原則通りの計算を行い
(602,000円―2,000円)×33.693%=202,158円
となり、ワンストップ特例によるものより22,643円多く引下げとなります。
特例控除が住民税所得割額の20%を超えたことで、2,000円の他に37,843円自己負担が出てしまいますが、確定申告を行うことで自己負担額を22,643円引き下げることができます。
確定申告したほうが有利か事前にシミュレーションを
自己負担を増やさないように、住民税所得割額の20%を越さないようにしたほうが良いのですが、返礼品を追うことで超えてしまうことも考えられます。
ふるさと納税ポータルサイト
で上限額を試算できますが、自治体の税額試算システム(例えば東京都江戸川区の場合)では、特例控除の上限額を超えているかも確認することができます。
特例控除の上限を超えてしまった場合は、手間がかかりますが確定申告を行うことも考えてください。
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