上場株の配当は3種類の方法で確定申告できる 上場株の配当は3種類の方法で確定申告できる
上場株の配当は、NISAで購入した株の配当は非課税ですが、その他は所得税15%、復興特別所得税率0.315%、住民税5%が徴収された状態で受け取ります。
予め徴収されるので申告対象としなくても良いのですが、配当はこの他に2種類の申告方法があり、うまく活用すると有利に税金の還付を行うことができます。
目次
上場株配当における3種類の申告方法とは
例えば1万円の配当を受け取る際は、所得税1,531円・住民税500円が徴収されますが、確定申告した際の申告方法によっては再計算されることがあります。
申告方法は下記の3通りですが、どのようなケースで選択すべきかを解説していきます。
総合課税
申告分離課税
申告不要制度
総合課税:所得税率が低税率の場合有利
これは配当所得を、給与所得などと同様に、所得に応じて所得税率が変わる方式で申告する方法です。
課税所得に応じて、所得税は下記のように計算されます。
課税所得=A | 所得税 |
195万円以下 | A×5% |
195万円~330万円 | A×10%-97,500円 |
330万円~695万円 | A×20%-427,500円 |
695万円~900万円 | A×23%-636,000円 |
900万円~1,800万円 | A×33%-1,536,000円 |
1,800万円~4,000万円 | A×40%-2,796,000円 |
4,000万円~ | A×45%-4,796,000円 |
税率が5%や10%の範囲であれば、源泉徴収の所得税率15%を明らかに下回りますから、総合課税で申告したほうが有利であり、源泉徴収された税金の還付(もしくは事業所得などから発生する税額から控除)も見込めます。
しかし、実際にはもう少し高い税率でも総合課税が有利であることを、計算事例で示します。
総合課税の計算事例
・上場株式の配当所得:15万円
(所得税22,500円・復興特別所得税472円・住民税7,500円が源泉徴収される)
・上記配当所得を除く課税所得:800万円(給与年収約1,200万円相当額)
この場合、配当所得を除く課税所得800万円でも、配当所得を含む課税所得815万円でも税率23%です。
配当所得を総合課税で申告すると、15万円×23%=34,500円だけ所得税が増え、源泉徴収されている所得税を上回るように見えます。
総合課税では配当控除も使える
しかし配当所得を総合課税で申告した場合、上記の表で計算される所得税額から配当所得×10%だけ引き下げることができ、この引下げ額は配当控除と呼ばれます。
配当控除を考慮すると増える所得税額は15万円×(23%―10%)=15万円×13%=19,500円となり、源泉徴収されている所得税22,500円を下回り、差額は還付・控除対象となります。
復興特別所得税額は19,500円×2.1%=409円となり、こちらも源泉徴収分を下回ります。
23%より上の段階の税率は10%増えて33%となるため、さすがにこの税率に該当する高所得者は、総合課税の選択が不利になります。
申告分離課税:所得税率が高税率かつ損失がある場合に有利
源泉徴収されている税率と同じ税率が適用されますが、上場株の売買で損失が出ていれば相殺できるのが申告分離課税です。
申告分離課税の計算事例
・上場株式の配当所得 :15万円
・上場株式の譲渡損失:10万円
・上記配当所得を除く課税所得:910万円(給与年収約1,300万円相当額)
総合課税の所得税率は33%が適用される段階ですので、配当を総合課税では申告しないほうがいいパターンです。
ただ配当所得と譲渡損失は相殺でき、損失10万円に係る所得税・復興特別所得税額15,315円の還付が見込めます。
住民税でも申告分離課税の適用で、損失10万円に係る住民税額5,000円が控除・還付となります。
申告不要:所得税率が高税率かつ損失がない場合に有利
上記申告分離課税の計算事例において、譲渡損失が無いケースであれば、配当を申告しても還付は見込めません。
この場合は申告不要制度を活用し、申告の対象とするのはやめましょう。
住民税は所得税と違う方式での申告もできる
住民税においては総合課税の税率は10%と、源泉徴収の住民税率5%を上回ります。
住民税の配当控除は配当所得×2.8%であり、配当控除後の住民税率も7.8%と5%を上回ります。
確定申告を行った場合、通常所得税と住民税では同じ課税方法が適用されますが、総合課税を選択すると住民税では明らかに不利になります。
これを回避するためには、住民税申告と確定申告の両方を行うことになります。
配当所得は例えば確定申告では総合課税、住民税申告を申告不要として、給与など他の所得は全く同じ形で申告するのです。
二度手間になる方法ですが、有利な税金対策としては押さえておきたい方法です。
スポンサーリンク