複雑な生命保険料控除の基本を知ろう 複雑な生命保険料控除の基本を知ろう
日本人は民間保険(特に生命保険)好きとは言われていますが、生命保険に関しては幅広く税制優遇が認められています。
生命保険料控除により、課税される所得額を引き下げることができますが、支払額がそのまま引き下げられるわけではなく、種類・契約年によって控除額も変わるため、落ち着いてしくみを理解しておきましょう。
目次
生命保険料控除と税額との関係
そもそも生命保険料控除とは、政策上の配慮で所得税や住民税の課税対象所得を引き下げる「所得控除」の一種です。
誤解しないで頂きたいのは、控除額がそのまま税額を引き下げるものでは無いという点です。
例えば生命保険料控除額が12万円の場合に、所得税が12万円下がるわけではありません。
所得税率が5%であれば、課税所得×5%が所得税額ですから、生命保険料控除額12万円のうち所得税率5%分だけ、つまり6,000円が所得税引下げとなるのです。
住民税に関しても、同様に税率分(通常10%)だけ引き下げになります。
生命保険料控除の種類
保険の種類により、生命保険料控除は3種類に分かれます。
個人年金保険料控除
公的年金で足りない分を補完する個人年金保険に対する生命保険料控除です。
介護医療保険料控除
医療保険・介護保険に対する生命保険料控除で、病気休業中に給与相当額を保障する就業不能保険・所得補償保険も対象となります。
生命保険会社だけでなく、損害保険会社と契約した保険も対象です。
一般生命保険料控除
上記の個人年金保険料控除・介護医療保険料控除に該当しない生命保険は全てあてはまります。
例えば死亡保険・学資保険が該当します。
契約年による区分
平成23年以前と平成24年以降の契約では控除額が変わり、前者は旧契約・後者は新契約に分類されます。
旧契約に関しては、介護医療保険料控除が無く、これらの対象になる医療保険等も一般生命保険料控除です。
種類と契約年により、控除の種類は下記の5種類に分かれます。
・旧個人年金保険料控除
・旧一般生命保険料控除
・介護医療保険料控除
・新個人年金保険料控除
・新一般生命保険料控除
生命保険料控除の額
生命保険料控除の額は、下記の数式を当てはめて計算します。
所得税・旧契約
年間の支払保険料 | 生命保険料控除額 |
2.5万円以下 | 保険料 |
2.5万円~5万円 | 保険料×1/2+1.25万円 |
5万円~10万円 | 保険料×1/4+2.5万円 |
10万円以上 | 5万円 |
所得税・新契約
年間の支払保険料 | 生命保険料控除額 |
2万円以下 | 保険料 |
2万円~4万円 | 保険料×1/2+1万円 |
4万円~8万円 | 保険料×1/4+2万円 |
8万円以上 | 4万円 |
住民税・旧契約
年間の支払保険料 | 生命保険料控除額 |
1.5万円以下 | 保険料 |
1.5万円~4万円 | 保険料×1/2+7.5千円 |
4万円~7万円 | 保険料×1/4+1.75万円 |
7万円以上 | 3.5万円 |
住民税・新契約
年間の支払保険料 | 生命保険料控除額 |
1.2万円以下 | 保険料 |
1.2万円~3.2万円 | 保険料×1/2+6千円 |
3.2万円~5.6万円 | 保険料×1/4+1.4万円 |
5.6万円以上 | 2.8万円 |
簡単な計算例
例えば平成29年の1年間において、保険料支払い額が
・医療保険:3万円(平成24年契約)
・死亡保険:6万円(平成23年契約)
の場合、医療保険は介護医療保険料控除、死亡保険は旧一般生命保険料控除に該当します。
所得税の控除額は、保険の種類ごとに計算すると
介護医療保険料控除:3万円×1/2+1万円=2.5万円
旧一般生命保険料控除:6万円×1/4+2.5万円=4万円
となり、合算して6.5万円となります。
住民税の控除額も同様に計算すると、介護医療保険料控除が2.1万円、旧一般生命保険料控除が3.25万円となり、計5.35万円となります。
注意点1:同じ種類で新旧両方ある場合
平成29年での保険料支払い額が
・医療保険:3万円(平成23年契約)
・死亡保険:6万円(平成25年契約)
の場合、医療保険は旧一般生命保険料控除、死亡保険は新一般生命保険料控除に該当します。
所得税においては、旧一般生命保険料控除2.75万円、新一般生命保険料控除3.5万円ですが、同じ種類の新・旧が混在する場合は、複雑です。
旧契約の控除額が、所得税4万円・住民税2.8万円以上の場合は、旧契約の金額のみ採用されます。
そうでない場合は新旧の控除額を合算しますが、所得税4万円・住民税2.8万円が上限額です。
この例では旧一般生命保険料控除2.75万円<4万円、合算額6.25万円>4万円のため、所得税の控除額は4万円です。
住民税の控除額も同様に2.8万円と計算されます。
注意点2:全体の上限額
平成29年での保険料支払い額が
・医療保険:8万円(平成25年契約)
・死亡保険:10万円(平成23年契約)
・個人年金保険:10万円(平成23年契約)
の場合所得税では、介護医療保険料控除4万円、旧一般生命保険料控除5万円、旧個人年金保険料控除5万円となり、単純に合算すると14万円になります。
しかし所得税において全体の上限額は12万円になるため、このケースでの控除額は、合算額より下回る点に注意してください。
なお住民税において全体の上限額は7万円となります。
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